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『名家灸選』から考える眼科疾患について



『名家灸選』

浅井南皐(あさいなんこう)撰。日本・江戸後期の文化10年(1813)刊行の灸法書。
内外を問わず家伝、古伝の灸法から、試して治療効果のあったものを収載したもの。
門人・平井康信(ひらいようしん)『続名家灸撰』『名家灸撰三編』を編纂刊行した。

『名家灸選』
から考える
眼科疾患について
「原文」 気逆赤眼 昏暗不明
「書き下し」気逆して赤眼あるいは昏暗、明らかざる

「治療」風門百壮、三里十壮
毎日報之
素頭上有瘡気逆気者此法至妙
「書き下し」風門百壮、三里十壮、毎日之を報(むく)いる
素より頭上瘡気有り、逆気する者、此法至て妙

「原文」虚眼無光
「書き下し」虚眼、光がない

「治療」肝兪五十壮、腎輸三十壮
右灸畢而後灸三里十壮能降逆気 逐日報之
「書き下し」肝兪五十壮、腎輸三十壮
右灸畢て而後 灸三里に灸すること十壮能く・逆気を降ろす 逐日之を報いる

「原文」小児雀目
「書き下し」小児の雀目(夜盲症、小児疳眼の初期に常に発するもの)黒めに翳を生じる
小児疳眼の意味、主に脾胃を虧損し、精血が不足し、目が栄養されず、そこに肝熱が上亢して起こる
眼が乾いて渋り、甚だしい場合は眼球が枯萎して失明する。

「治療」合谷一穴灸之十壮
「書き下し」合谷一穴、之灸すること十壮



『続名家灸選』
から考える
眼科疾患について
「原文」卒生翳目赤渋痛
「書き下し」にわかに翳が生じ、目赤く渋り痛みがある

翳目の読み エイモク かすみめ

「治療」灸耳中殊子内側三五壯左在灸左在右灸右
珠子耳前起肉俗曰小耳是也穴近手太陽聴宮穴
又法千金方
灸手大指節横紋三壮在左灸右在右灸良
「書き下し」耳中殊子の内側に灸、三五壯、左在れば左灸、右に在れば右に灸
珠子耳前の起肉俗に、小耳曰く、是也。穴は手の太陽聴宮穴に近し 又法千金方
灸手の大指節横紋灸、三壮。左在れ在左灸、右在れば右灸、良し。

「原文」小児雀目夜不見物
「書き下し」小児雀目で夜に物が見えざるもの

「治療」 (明堂灸経 治小児雀目夜不見物)
灸手大指甲後一寸内節横紋頭白肉際各一壮即此穴
「書き下し」明堂灸経 小児雀目夜物が見えざるを治す。手大指甲後一寸内節横紋の頭白肉際に灸、
各一壮即ち此穴

「原文」倒睫拳毛
「書き下し」睫が倒れて毛が上がる(逆さ睫毛)

「治療」患在右眼者右手搭左手肘前其食指當肘尖如将握之側状小指本節處是穴乃心包経所過之處
「書き下し」患右眼在る者は右手、左手の肘の前に搭(のせ)、其の食指、肘尖に當れば、握ること
将に之状の如く。則小指の本節處是穴乃心包経過ぎる所之處



『名家灸撰三編』
から考える
眼科疾患について
「原文」内障虚眼及中寒多涙一切眼翳或不能遠視者
「書き下し」内障虚眼および中寒涙多く、一切の眼翳或は不能遠視で遠くが見えざるもの

「治療」先将蝋縄掛頸大抒骨向前雙垂至 両乳頭截断却翻縄放結喉向後垂下脊中縄盡處假以墨點記
非是穴次以同身寸三寸中折之横放假點上両頭盡處點記凡二穴
「書き下し」先、蝋縄を将に、頸の大抒骨に掛け、前を向き、雙垂し両乳頭に至り、截断す却を縄翻
し結喉を放し、後を向いて垂下し脊中縄盡處假に墨を以って點記す。是穴非、次に同身寸三寸以って、
中折之横に放し假點上中り、両頭盡處點記す凡二穴

「原文」爛弦
「書き下し」爛弦・・ただれ眼

「治療」灸肩井二穴七壮数報之
「書き下し」灸肩井の二穴治す。七壮数之を報いる

「原文」虚眼黄内障
「書き下し」虚眼で黄内障

「治療」百会一穴毎日灸一壮
「書き下し」百会一穴毎日灸一壮

「原文」卒生翳渋痛俗称目瘡物并治歯痛
「書き下し」にわかに翳を生じ、渋り痛み、俗に目瘡と称し、併せて歯痛がある

「治療」灸手陽輔骨上七壮在患灸在右患灸右
「書き下し」手の陽輔骨上灸。七壮、左患は左灸。右患は右灸

「原文」風眼翳膜疼痛
「書き下し」風眼、翳膜、疼痛あり

風眼・・俗にいうハヤリ眼
翳膜・・眼にかすみのかかること・・肝経の風熱、肝腎不足

「治療」穴在中指本節前骨尖上握拳取之 患左灸右患右灸左シュ(火主)如小麦
千金方曰患右目灸右手左手亦如之
「書き下し」穴は中指本節の前骨尖上に在る。拳握って之を取る。患左なら右に灸、右が患なら左灸、
シュ(火主)小麦の如し
千金方曰く、右目患、右手灸、左手も亦如之

「原文」眼暗
「書き下し」眼が暗くなる

「治療」灸大椎下数節第十脊中安灸二百壮 惟多為佳至験
「書き下し」大椎下節を数て、第十脊中灸、安灸二百壮、惟多だ佳為し至験

「原文」倒睫拳毛
「書き下し」睫が倒れて毛が上がる(逆さ睫毛)
「治療」将小竹片一頭住節一頭割剖作両片鉗眼下胞畢竹片一頭以絲扎定灸鉗起肉上
「書き下し」小竹片将に、一頭節を住、一頭割剖、両片と作、眼の下胞鉗(はさ)み、畢り竹片の一頭絲
以って、扎り定、鉗み起す肉上に灸



『名家灸選』、『続名家灸撰』、『名家灸撰三編』から症状、治療を引用しました。
参考文献 漢方用語大辞典 inserted by FC2 system